サトウキビ

サトウキビは種子島の主幹作物

サトウキビは種子島の主幹作物の中で、一番栽培されている農産物です。種子島全域で栽培されており、令和5年11月29日(水)に、工場が稼動し圧搾を開始しています。今年は13年ぶりに早期操業となりました。

令和5年度の栽培農家全戸数は1228戸(-60戸)、令和4年度に対し96%で減少。収穫面積は2,318ヘクタール(ただし、12ヘクタールは含蜜糖向け)。前年度に比較して、20ヘクタールの減少に転じています。生産量は、147,478トンを見込んでいます(工場処理量146,802トン)。これは、前年度実績に比較して、1,987トン(95.2%)の減少を見込んでいます。

前年度より3,732トンの減少となる今期は、台風6号による襲来にみまわれ、収量は、前年を下回ることが予想されています。なお、10月末時点の圃場でのブリックスは、4種合計で、14.7%で、前年に比べてやや上昇しています。糖度は上昇しているので、直接きび買い入れ価格は若干上昇するものと思われます。また、今後の天候も大事です。

しかし、明るいことばかりではなく、データを見てわかることは、栽培農家戸数の減少傾向が続いていることです。前年度に比べて60戸下回りましたが、増加に転じる要素が見当たらないことです。毎年かなりの農家が栽培をやめている現実があります。少子化、高齢化が一層進んでいることも原因と考えられます。関係機関との連携により、面積回復2,500haを目標にしています。

収穫面積と生産量見込(R5/6年期)
市町名 栽培農家(戸) 収穫面積(ha) 10a当り収量(kg) 生産量(t)
西之表市
454(-15)
689(+18)
6,473(+38)
44,581
中種子町
596(-35)
1,169(-5)
6,660(-40)
77,736
南種子町
178(-10)
460(-33)
5.470(-138)
25,162
合計
1,228(-60)
2,318(-20)
6,363(-140)
147,478
前年実績
1,288
2,338
6,394
149,465
対比%
95.6
99.2
96.0
95.2

ところで、令和2年7月西之表市のキビの申請によると、農林8号72%、農林18号19%、農林22号8%、農林32号1%の割合になっています。これは正確なものではないので参考までに。これまで島内で栽培されているサトウキビの品種は、農林8号が主でしたが、一時期農林22号が増えてきていましたが、最近になってその比率が低下しています。その理由は、農林8号に比べて茎が細いので、脱葉しにくい短所もありますが、反収も伸びないのが主な原因です。しかし、機械化が進み、処理しやすさから少しずつ増えていくのではといわれています。

サトウキビの糖度は甘蔗(かんしゃ)糖度と呼ばれ平均で13%くらいです。令和4年度は、台風14号の影響で、生育やや不良で、糖度も10月末圃場ブリックスは4種合計で、14.7%(前年同時期114.4%)に比較して、やや増加している状況です。

サトウキビの基準買入価格は、きび原料代5,348円(糖度13.7度)と国から直接支払われる交付金16,860円を合せると、トン当たり22,208円になります。現在、細かに糖度ごと価格が決まっており、糖度13.1以上〜14.3以下は基準糖度といわれ、交付金が16,420円で統一されています。糖度が13.1を0.1度下回るごとに100円を差し引き、糖度が14.3を0.1度上回るごとに100円を加えた額にそれぞれなります。

中種子町にある新光糖業樺種子工場では、令和54年11月29日(水)よりサトウキビの圧搾が行われており、令和5年4月3日(木)23時まで続きます。平均圧搾量1,3227トン/日の処理量で操業終了まで計画されています。

なお、令和5年度は、増産推進日を設けておりませんので、ご注意ください。

その他明るい話題として、前年製糖操業から、新品種「はるのおうぎ」が原料として本格的に出荷されています。茎数が多いことが特徴で、単収の向上・品質向上・台風被害の経滅、バガス量の増加等が見込まれ、農家の生産意欲向上につながるものと期待されています。

写真一枚目は、令和4年度から本格的に原料として出荷されているサトウキビの新品種「はるのおうぎ」です。特徴として、茎が長く3〜4メートルはあり、茎は農林8号に比べて細く、茎数が多いです。また、少し茎が固いです。

写真二枚目は、「はるのおうぎ」のハーベスタによる刈り取り作業です。茎は細いが、株数が多いので、全体として収穫量が多くなっています。また、茎が固いことで、台風にも強いことを意味します。

写真三枚目は、収穫されたはるのおうぎです。茎が細いのが分かります。

ところで、工場で最終処理されたものは分蜜糖と呼ばれ出荷されます。この分蜜糖のことをローシュガーと呼んでいます。サトウキビを製糖工場で処理する以外に、サトウキビを圧搾しその搾り汁を煮詰めた黒砂糖も現和や沖ヶ浜田で作られています。これはほとんどお土産用です。また、お土産用にサトウキビを30〜40センチくらいに切ったものもあります。

収穫が終わると、新植したり、切り株にビニールを被せて育成していきます。この栽培は、種子島独自のものとされています。写真四枚目が「マルチ栽培」、五枚目が普通の「露地植え栽培」です。サトウキビは、一度新植すると、3年間は、その状態で収穫できます。4年目は必ず新植作業を行います。サトウキビには竹みたいに節があります。新植するときは、2〜3節を残し40〜50センチくらいに切り、それを植えていきます。

夏になると、畑のサトウキビも大きく成長し、2〜3メートルくらいに成長しています。その頃になると台風も発生するので、サトウキビ農家の人たちにとっては、大変気がかりな季節になってきます。一度、襲来を受けると、全部倒壊され寝てしまいます。一番成長する時期に、台風は厄介なものです。しかし、倒壊したサトウキビは回復力があり、再び上に成長していきます。収穫まで、追肥や草取りなどの管理作業があります。

ところで、サトウキビの原産地は、南太平洋のニューギニア周辺で誕生したといわれています。そして、種子島では文政十年(一八二七年)から砂糖作りが始まったといいます。地元では、サトウキビのことを「オーギ」と呼んでいます。これは葉が扇に似ていることとか、イネ科の植物で多年草木の「荻」に似ているところから呼ばれています。また、砂糖を煮詰める際の薪を「砂糖木(さとうぎ)」と呼び、そこからきているなどの諸説があります。

写真七枚目は、西之表市住吉のサトウキビ畑です。ハーベスタを使ってキビを収穫している作業です。現在、97〜98台のハーベスタが平均して稼働しており、一時間当たり4、5トンを刈り取ることができます。写真でも分かるとおり、ハーベスタを使う場合、あらかじめキビの先端部を切り落とす必要があります。その作業は、事前に切り落としておきます。また、出荷されるサトウキビの75パーセントが機械切りとなっています。

写真八、九枚目は中種子町牧川のきび畑での収穫作業です。ハーベスタは、文明農機製のものです。その下が、刈刃の部分を写したものです。刃が内側に回転するので、サトウキビを抱き込む形で刈り取るのです。

現在、種子島でハーベスタは、100台はあるとのこと。もちろん、ハーベスタを使う場合、三年キビの収穫時に使用するとのことですが、耕作面積が広い場合は、人間の手作業ではとても追いつけなく、ハーベスタを使っています。先端部を短く切り取ると糖度に影響し、欲せずに切り取ることが必要だと言われています。ハーベスタでは、一畦ずつキビを処理していきます。なお、処理されたキビは、30センチ前後に切断されています。写真六枚目のような簡易のハーベスタも使用されています。

写真九枚目は、サトウキビの手作業の様子です。一本ずつサトウキビを切り倒し、それを専用鎌によりハカマを剥ぎ取っていきます。20本ずつ束ねたサトウキビを道沿いまで運んでおきます。結構大変な作業です。種子島での収穫作業、4月中旬ごろまで続きます。

写真十枚目は、サトウキビの機械による植付け作業です。トラクターの後部にきび植付け用の機械を装着しています。二名によりきびを投入していきます。あとは、機械が肥料の添加ときびの植付けをすべて行ってくれます。1時間に10アールの植付けができるとのこと。植付け作業の簡素化が期待できます。

ところで、サトウキビの収穫サイクルは、次のようになっています。
       新植(夏、冬)
        ↓
       収穫する=収穫量が多い
        ↓
       収穫後、ポリビニールを被せる。切株から新芽が出てくる
        ↓
       収穫する=収穫量が多い
        ↓
       収穫後、ポリビニールを被せる。切株から新芽が出てくる
        ↓
       収穫する
        ↓
       すべて新植する

砂糖の歴史
754     鑑真和上により砂糖が伝えられる
1550年頃 日明貿易で砂糖の輸入が盛んになる
1609    直川智(奄美大島)甘蔗導入と同時に黒糖の製造法を伝える
1623    儀間真常 沖縄に黒糖製造法を伝える。徳川家光時代本土で甘蔗が試作される
1627    阿波(徳島)で製糖
1735    尾張知多で製糖 九州肥前でも製糖
1740    紀州で製糖
1780    日向、阿波で製糖確立
1788    讃岐、伊予で製糖確立 その後各地で製糖確立
1819    天草でさとうきびが栽培される
1825    種子島でさとうきびが栽培される
1838    薩摩、大隈で糖業開始(それ以前の可能性も大)
1853    ペリー小笠原にさとうきびを伝える
1902    奄美大島に糖業試験場設立
1915    世界各地より導入した50品種を試作
1931    沖縄試験場で交配採種に成功
1990    NiF8(農林8号)、Ni9(農林9号)を育成
※ 黒糖伝承館の資料より抜粋

※ サトウキビの諸データは、新光糖業蒲l提供

新品種「はるのおうぎ」

新品種「はるのおうぎ」
【撮影場所】
鹿児島県西之表市国上
【撮影日時】
2023年1月5日(木)/9時31分

「はるのおうぎ」の収穫作業

「はるのおうぎ」の収穫作業
【撮影場所】
鹿児島県西之表市国上
【撮影日時】
2023年1月5日(木)/9時50分

収穫された「はるのおうぎ」

収穫された「はるのおうぎ」
【撮影場所】
鹿児島県西之表市国上
【撮影日時】
2023年1月5日(木)/9時49分

マルチ栽培

マルチ栽培
【撮影場所】
鹿児島県西之表市住吉
【撮影日時】
2014年4月19日(土)/14時11分

露地栽培

露地植え栽培
【撮影場所】
鹿児島県西之表市上能野
【撮影日時】
2014年4月25日(金)/16時25分

小型のハーベスタ

小型のハーベスタ
【撮影場所】
鹿児島県熊毛郡中種子町坂井
【撮影日時】
2010年1月2日/10時59分

松元機工製大型ハーベスタで収穫

サトウキビをハーベスタで収穫
【撮影場所】
鹿児島県西之表市住吉
【撮影日時】
2011年12月24日(日)/14時19分

松元機工製大型ハーベスタの刈刃

大型ハーベスタでの収穫
【撮影場所】
鹿児島県西之表市住吉
【撮影日時】
2011年12月24日(日)/14時19分

文明農機製大型ハーベスタでの収穫

文明農機製大型ハーベスタでの収穫
【撮影場所】
鹿児島県中種子町下牧川
【撮影日時】
2013年3月25日(月)/14時19分

文明農機製大型ハーベスタの刈刃

文明農機製大型ハーベスタの刈刃
【撮影場所】
鹿児島県中種子町下牧川
【撮影日時】
2013年3月25日(月)/14時29分

手作業での収穫

収穫されたサトウキビ
【撮影場所】
鹿児島県西之表市下西下石寺
【撮影日時】
2007年12月2日/14時29分

機械での植付け作業

収穫されたサトウキビ
【撮影場所】
鹿児島県熊毛郡中種子町坂井本村
【撮影日時】
2013年3月10日/11時03分

※ 2023年(令和5年)1月5日(木)、西之表市国上山奥のさとうきび生産農家杉為昭さんのさとうきび畑でのハーベスタによるさとうきびの新品種「はるのおうぎ」収穫作業の模様を紹介しています。この動画の中には、さとうきび畑、収穫前のはるのおうぎ、ハーベスタでの前後、横からの収穫作業、収穫した網袋のさとうきび、杉為昭さんの新品種はるのおうぎに関するコメントなどを収録しています。

なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。

さとうきびの新品種「はるのおうぎ」無精脱ハーベスタ収穫作業・生産農家はるのおうぎについて語る 令和5年1月5日〜種子島の農業

※ 2020年1月31日(金)、西之表市現和武部のさとうきび畑でのハーベスタによるさとうきびの収穫作業の模様を紹介しています。この動画の中には、ハーベスタでの前後、左右からのハーベスタの収穫作業、収穫した網袋のさとうきび、作業者のコメントなどを収録しています。

なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。

種子島の農業:ハーベスタさとうきびの収穫作業 西之表市現和武部令和2年

※ 2013年3月10日(日)、中種子町坂井本村のきび畑で、機械によるサトウキビの植付け作業を撮影したものです。

なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。

種子島の農業:機械によるサトウキビの植付け作業

※ 2013年3月25日(月)、中種子町牧川のきび畑で、文明農機及び松元機工の大型ハーベスタによるサトウキビの収穫作業を撮影したものです。

なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。

種子島の農業:大型ハーベスタによるサトウキビの収穫作業

2013.12.27〜