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市内の子供たちを対象とした製鉄実験

スクール開始

スクール開始

平成19年12月9日(日)、午前9時より種子島開発総合センター内、サンシャインスクールに於いて、市内の子供たちを対象とした製鉄実験が行われました。これは「おもしろ博物教室」の一環として、種子島で砂鉄が豊富に採れる「上西海岸」から採取した砂鉄から鉄を作り出す実験です。子供たち約20名が参加し、鉄ができるまで期待しながら、実験の面白さもあり貴重な体験に満足した様子でした。

午前9時よりサンシャインスクールの講師の方の挨拶がありましたが、それ以前にオイル缶による簡易溶鉱炉の製作は済ませていました。今回は、西之表市上西海岸から採取した砂鉄6キロから鉄1キロを作る実験です。なお、砂鉄は十分に不純物を取り除き、一旦炉を通したものを使用していきます。一般的に砂鉄は黒色で、これ以上さびることがありません。したがって、砂鉄は、四酸化三鉄の状態になっているわけです。砂鉄は、自然界にたくさん埋蔵されています。化学式では、Fe3O4です。これに木炭の炭素と砂鉄の酸素と反応させることによって二酸化炭素[CO2]ができ、同時に鉄[Fe]ができるのです。高温状態[1300度]で、炭素と砂鉄の中の酸素と反応させることがミソです。実際の製鉄所では、木炭の代わりにコークス、砂鉄の代わりに鉄鉱石を使用しています。

写真1枚目は、午前9時より、講師の方により挨拶があり、スクール開始です。

写真2枚目は、完成した簡易溶鉱炉です。レンガの上にオイル缶で三段重ねで作ってあります。下段は、送風口やノロ出し穴(2ヶ所)あります。中段には、針金で温度を測る小さな穴があります。上段から、砂鉄、木炭、貝殻粉末を交互に投入します。

溶鉱炉の組み立て

溶鉱炉の組み立て

溶鉱炉の点火

溶鉱炉の点火

写真3枚目は、溶鉱炉の中に木炭を入れ空焚きが終わり、送風を開始しているところです。炉内の温度を1000度まで上げていきます。上がるまで少し時間がかかるので、その合間に前回作った鉄など、また、鉄の採集について子供たちに説明などしていきます。

写真4枚目は、炉内の温度が1000度を超えたら、操業を開始していきます。子供たちが順番に、砂鉄、木炭、貝殻粉末を投入していきますが、写真は木炭を投入しているところです。ここでの作業は2分間隔で、砂鉄200グラム、木炭300グラム、貝殻粉末50グラムを交互に投入していきます。これを30回行います。

木炭の投入

木炭の投入

ノロ(不純物)を取り除く

ノロ(不純物)を取り除く

写真5枚目は、送風を開始して約45分経過した状態です。ノロ(不純物)を取り除いているところです。炎の下が溶岩みたいに流れ出しているのがノロです。これを随時行っていきます。ノロ出しの穴は、反対側にもあります。ところで、鉄は炉床の真ん中にでき、その上に不純物があるので、これを取り除く必要があるのです。

写真6枚目は、ノロも取り除き最後の段階です。送風機も停止し、炉の解体作業を始めていきます。出来上がった鉄は、下段の炉床にできています。

溶鉱炉の停止

溶鉱炉の停止

溶鉱炉の解体

溶鉱炉の解体

写真7枚目は、上段と中段の炉を解体し、下段の炉をレンガから下ろし、横に倒して炉床にできた鉄を取り出していきます。皆さん真剣な眼差しで見つめていました。

写真8枚目は、出来上がった鉄の塊です。これを水で急冷していきます。水の中に入れると、グツグツと音がします。

出来上がった鉄の塊

出来上がった鉄の塊

急冷後の鉄

急冷後の鉄

写真9枚目は、水で急冷したあと鉄を取り出した様子です。写真のように冷やされた鉄は黒くなっています。それを子供たちが珍しそうに見ています。

写真10枚目は、子供たちが代わるがわる出来上がった鉄の塊に触れ合っています。出来上がった鉄、実際手に持ってみると、小さい割には重たいです。

鉄の塊

鉄の塊

鉄を計量

鉄を計量

写真11枚目は、出来上がった鉄を計ってみると950グラムでした。実際には1キロできあがるのですが、ノロの中に小さな塊が残っていました。

実験の終了

実験の終了

写真12枚目は、無事砂鉄から鉄が出来上がり、実験は成功でした。子供たちも大変喜び合っていました。また、メディアの感想なども聞かれる子供達もいました。そして、サンシャインスクールの閉会です。皆さん、お疲れ様でした。

我が国で鉄の使用が始まったのは、縄文時代晩期と言われています。約二千三百年前のことです。その後、弥生時代になると急速に鉄器が広まっていきます。何年か前、「もののけ姫」の映画を見たことがあります。そのなかで、鉄を作るところが出てきます。その場所が「たたら」です。「たたら」は鉄を作るところをいいます。たたら製鉄は、日本古来の製鉄法で、私たちの先祖が築き上げたもので、千年以上の歴史を持つものです。砂鉄は、海岸の砂浜や山で採集されますが、種子島では海岸の砂浜だけです。鉄の品質は、砂鉄は劣り、山で採れたものが一般的によいとされています。

では簡単に、砂鉄から鉄を作るまでを紹介しますと、
良質な砂鉄を集める
西之表市内の海岸では、どこでも採取できますが、特に上西海岸で採取したものを今回使用しています。
不純物を取り除く
採取した砂鉄は、不純物が混ざっているので丁寧に取り除き、一旦炉の中を通し、更に不純物を取り除いて使用しています。今回6キロの砂鉄を使用しています。
粘土を作る
粘土は、簡易溶鉱炉としてオイル缶を使うので、この内側に貼り付け断熱材として使います。なお、粘土は砂を多量に混ぜたものを使用しています。
オイル缶で溶鉱炉を作る
円形のオイル缶を使用し、内側に断熱材として粘土を貼り付けていきます。溶鉱炉は三段重ねで使用していきます。この方式は、横井式簡易溶鉱炉といわれています。
木炭を用意する
木炭は燃焼しやすいように、3〜4センチの大きさに切ったものを使用していきます。
貝殻を用意する
炉内で鉄とノロ(不純物)が分離しやすいように、貝殻を細かく粉末にしたものを使用していきます。
送風機を用意する
炉内に空気を送るため、掃除機を使用します。温度を調整する必要があるので、掃除機の電圧をスライダックで調整し、風量を調整していきます。
火入れを行う
木材で空焚きをして、粘土を乾燥なじませる。
木炭投入
木炭を投入し、しばらく空焚きを行う。
ノロ出口を塞ぎ送風開始
ノロ出口などの穴を粘土で塞ぎ、送風を開始し炉内の温度を上げていきます。
炉内温度が1000度を超えたら投入作業開始
二段目の炉で、温度を管理し1000度を超えたら、砂鉄、木炭、貝殻粉末を投入開始する。
第1回ノロ出し
炉床にノロ(不純物)が溜まってくるので排出する。
砂鉄、木炭、貝殻投入ストップ
砂鉄6キロ、木炭9キロ、貝殻粉末1.5キロを投入したらストップする。
送風停止・炉解体
操業開始してから約2時間経過したら、送風を停止し炉の解体を行い、鉄を取り出す。
鉄の出来上がり
解体した炉から取り出した鉄は、水で急冷し出来上がり。

普段何気なく使っている鉄製品。出来上がるまでにはいろいろの工程があり、大変分かりやすく勉強になりました。現代社会は、何一つ不自由なしに物が揃っていますが、しかし、いざ、鉄を作ろうとするならば、自分ひとりでは作れそうもありません。私たちの祖先がこのような鉄作りを考え出したことに、只々感心するばかりです。このスクールに参加された子供たちもきっと驚きと不思議さに感動したに違いありません。操業の合間に、製鉄所での鉄作りのビデオも見せていただき改めて、製鉄のこと知ることができました。

ところで、「サンシャインスクール」は、鉄砲伝来で知られる種子島の歴史の中でも、「古代製鉄」は特に重要な役割を果しており、製鉄技術がなければ近代武器である火縄銃の完成はなかったでしょう。このような古代製鉄を自ら体験することによって、ふるさとの自然など鉄砲製作と密着した歴史を学び、心豊かな青少年育成を目指す目的で設置されています。子供たちだけでなく大人も興味を持って体験できます。興味ある方は、ぜひ参加されたらいかがでしょうか。サンシャインスクールについては、種子島開発総合センター[0997-23-3215]にお問い合わせてください。

※ 

なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。

種子島の伝統行事:】

【撮影場所】
鹿児島県西之表市種子島開発総合センター
【撮影日時】
2007年12月9日(日)/8時57分〜11時59分
2016.6.19〜