宝満神社の秋季大祭で奉納された下の町の皆さんによる大踊りです。大踊りではありますが、安城踊りとは違った踊りです。大踊りは、「この寺」、「比翼連理」、「恋路」の三組です。
踊りの服装は、頭に花笠をかぶった踊り子が十七人、入鼓九人、そして鉦八人です。またハチマキをした白の衣装を着た太鼓八人がいますので、全体では二十五人の踊りです。安城踊りに比べ太鼓の衣装が違い、白と黒のコントラストがはっきりしています。
写真右方向から太鼓が先頭に掛け声を出しながら入場してきます。入場から退場まで四十五分を超える大踊りです。見た目は安城踊りとほとんど変わりません。歌詞も安城踊りによく似ています。基本の隊列は円形ですが、崩しになると垂直になったりします。大踊りは安城踊りと同様、出端、本踊り、崩し、引端の組踊りで構成されており、これを三組踊ります。ただし、二組目と三組目は休憩なく連続して踊ります。したがって、出端、引端は二回です。
大踊りの踊りの特徴は、太鼓と笠が二重円で移動しながら踊る時、基本的にはそれぞれ反対方向で移動していきます。しかし、太鼓は前進、後退を繰り返しますので、移動量は大変少ないです。この辺が安城踊りとやや違うところです。写真一枚目は、「この寺」の前段の踊りです。前段の踊りとは、崩しに入る前の踊りです。宝満神社境内に終始太鼓や鉦の音が聞こえ、祭りを盛り上げてくれた大踊りです。民族的な雰囲気が素敵ですね。
踊りが色々変化していきますが、時には荘厳な雰囲気もあります。また、勇壮な中にも哀愁も感じられる大踊りです。なお、花笠に付けている飾りは、タマシダ、稲穂、ススキ、飾り花などです。タマシダ・稲穂・ススキ何れも魔除け、悪魔祓いの効果はありますが、稲穂は実りの秋で感謝の気持ち、ススキは秋の雰囲気を演出しています。写真でも確認できると思います。
写真は一組目「この寺」の出端です。太鼓の勇壮な掛け声で入場してきます。そして、花笠が三人出てきます。次第に円形の隊列になっていきます。そして、本踊りが始まります。 | |
写真は一組目「この寺」の崩しです。太鼓は横一列、笠同士は対面になって踊ります。崩しは短い踊りです。これが終ると引端で、退場していきます。 | |
写真は一組目「この寺」の引端です。太鼓、花笠は一列になり入場位置まで退場です。しばらく休憩で二組目の踊りが始まります。 | |
写真は「比翼連理」の出端です。太鼓は外周、花笠は内周で、円形の隊列になっていきます。太鼓は時計方向に、花笠は反時計方向に前進しています。 | |
写真は三組目「恋路」の崩しです。太鼓と花笠は、垂直になっています。花笠の左は入鼓、右は鉦です。これが終わると、大踊りも全て終了します。 |
一 この寺
この寺に参りてみればありがたや 木の葉の煙はいつも絶やせん いつも絶やせん
この寺に参りて見ればおもしろや 八つ九つの稚児が字を書く 稚児が字を書く
字書くには黄金の墨もよかるける 揃えた筆は白金の軸
[くずし] 明日は瀬崎の駒追いで 明日は瀬崎の駒追いで
御馬はどれに召そうか 御馬はどれに召そうか
するぐち名馬を召そうよ するぐち名馬を召そうよ
引いて戻る夜明けには 引いて戻る夜明けには
夜明け方の横雲
二 比翼連理(ひよくれんり)
比翼連理と思えども 明日の別れをかねて思いしよ そう言うてなる身か恋の道
様に逢うとて水汲まば 水は七桶またも逢わんしを そう言うてなる身か恋の道
漏るその桶柄に水汲まば 漏るになずけて手招きしを そう言うてなる身か恋の道
[くずし] 豊後が勢はひるがえる 豊後が勢はひるがえる
日向の佐土原佐土郡 日向の佐土原佐土郡
それが薩摩に洩れ聞こえ それが薩摩に洩れ聞こえ
引いて戻る夜明けには 引いて戻る夜明けには
夜明け方の横雲
三 恋路
恋路をして磯辺を行けば千鳥鳴く なお鳴く千鳥が恋路をやめそよ
恋路をして薩摩の方を眺むれば 球磨八代を鏡とぞ見る 鏡とぞ見る
締むれば鳴る締めねば鳴らぬ小鼓の 心を調べに手をやれば鳴る 手をやれば鳴る
[くずし] おらが弟の千松は おらが弟の千松は
まだも幼き十三で まだも幼き十三で
富士野の軍に誘われて 富士野の軍に誘われて
引いて戻る夜明けには 引いて戻る夜明けには
夜明け方の横雲