トシドンは、西之表市鞍勇と野木平地域に伝承されている伝統芸能です。野木平地域でもしばらくトシドンを行っていませんでしたが、十一年前から毎年やっています。
トシドンは写真でも分かるとおり、鬼に似た仮面を被りムシロを着て、片手に大きな刃物を持った大変怖い神人です。天から首切り馬に乗ってやってくるトシドンは、子供のことでそこの親に代わり、しつけや教育のことで、お説教をしてくれる大変ありがたい方なのです。今年は、青のトシドン戸川さん、トシドン歴五年、赤のトシドン小倉さん、トシドン歴十年のベテランです。
平成二十一年十二月三十一日大晦日午後六時半過ぎから、青壮年、中学生が中心になり行われました。県道581号線沿いにある信楽寺に集まり、準備と打ち合わせを行います。巡回する家庭の子供たちの名前や言うことを聞かない内容などを間違いのないよう確認していきます。あらかじめ家族構成や長所、短所などをメモ書きで出してもらいます。今回は六時三十七分から行うことを振れているとのこと。
トシドンのほかに、脅し用の鐘やほうきを持った脇役も大変重要な役割です。民家に近づくと、鐘やほうきで壁などを叩き脅しながら玄関を開けて中に入っていきます。中へ入るとトシドンが、大きな声を上げながら子供の名前を呼び、目の前に座らせ、お説教を行います。これにたまらず、泣き出す子供もいます。なかには物音を聞いただけでトシドンが来る前から泣き出す子供もいますが、今回は泣き出すまでに至っていません。
一枚目の写真は、トシドンが現れて子供をお説教している場面です。「親の言うことはきいとるか!」とか「勉強もしといか」とか、親の言えない部分までトシドンがズバズバと説教してくれます。これにたまらず子供たちも言うことを聞くことをトシドンに約束していきます。そしてお説教が終わると、トシドンが土産の大きな餅を子供達に与えます。「来年もくいからなー、よっかー!、ちゃんと天から見といちゃろー」などと言いながら民家を後にします。
ところで、鞍勇と野木平地域は、明治時代に甑島から移住しています。したがって、トシドンは甑島に伝承されている伝統行事で、ユネスコにも登録されており、大変貴重な文化財となっています。野木平地域は、甑島から移住して平成二十八年で百三十年を迎えています。ここ種子島でも甑島の貴重な伝統行事が引き継がれています。
トシドンと子供でお互い手を握り合い約束をしているところです。なお、手の下方には脅しようの刃物を持っています。刃物は昔の家畜用の餌を切っていたハミキリです。 | |
トシドンが民家の中に入るときは、物騒がしさの中で家に入ります。脇役がおり、ほうきや鐘を使って、家を叩いたりして脅します。 | |
赤トシドンが子供に説教を行なったり、歌を歌えといっているところです。なお、民家の中は、怖い雰囲気を出すために照明は消してあります。 | |
子供たちへのお説教も一通り行うと、青トシドンがお土産として大きな餅を子供に渡しているところです。しかし、子供の顔は怖さで表情もさえません。子供たちのそばには家族全員座っています。たまには、お父さんやお母さんもお説教されることもあります。 |