さつまいもの歴史

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【サツマイモの原産地】

さつまいもの原産地は、メキシコ南部を中心とする中米から南米北部と一般的に言われています。最古のものは、ペルー海岸チルカ谷遺跡から発掘された炭化したさつまいもの根で、紀元前8000年から10000年前とされています。

【さつまいもの伝播歴史】

次の表は、さつまいもの伝播歴史をまとめたものです。注目されるのは、やはりというか、コロンブスの名前が出てくることです。さつまいもまで伝播していたんですね。それと、導入地を見ると、琉球、薩摩が多いです。

主なさつまいもの伝播歴史
西暦 導入人物 伝来地 導入地・人物者
1492 コロンブス スペイン 新大陸からイザベラ女王
1570 陳振竜(中国人) 中国(南部) ルソン島
1597 長真氏砂川旨屋 宮古島 中国
1605 野国総管 沖縄(琉球) 聞(福建省・ビン)
1609 島津家久 鹿児島(薩摩) 琉球(琉球出兵)
1613 ポルトガル人 鹿児島(坊津) ルソン島
1615 ウィリアム・アダムス 長崎(平戸) 琉球
1615 鼎山和尚 和歌山(紀伊) 薩摩
1623 鹿児島(奄美) 琉球
1692 江島為信 愛媛(伊予) 宮崎(日向)
1698 種子島久基 鹿児島(種子島) 琉球王
1705 前田利右衛門 鹿児島(山川) 琉球から漁船で
1713 下見吉十郎 瀬戸内(大三島) 薩摩(伊集院)
1715 原田三郎右衛門 長崎(対馬) 薩摩
1716 島利兵衛 京都 薩摩(硫黄島)
1733 井戸正明 島根(大森) 薩摩
1734 青木昆陽 東京(江戸) 薩摩
1735 青木昆陽 千葉(幕張、九十九星) 江戸
1735 カツオ船 高知(土佐) 薩摩
1751 吉田弥右衛門 埼玉(川越) 千葉(上総)
1757 長浜平吉 鹿児島(十島村) 琉球
1766 大沢権右衛門 静岡(御前崎) 薩摩の難破船
1825 川村幸八 宮城 千葉(下総)
1834 関沢六左衛門 北陸(加賀) 薩摩
1856 田中宮門 山形 新潟
1865 漁夫 長崎(五島) 薩摩(沖の島)
1868 松木五郎 滋賀(伊吹) 愛知
1870 吉田信敬 岩手 関東

資料提供:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場

【さつまいもの生産状況】

さつまいもは全国で栽培されています。農林水産省の平成23年度の統計では、全国で88万5900トン生産されています。その生産別では、鹿児島県40%、茨城県19%、千葉県13%、宮崎県8%、熊本県3%、徳島県2.8%、その他17%となっています。平成21年度に102万6000トンの生産量があり、ここから急激に低下し、平成22年度に最低を記録しています。

統計データを見ると、平成22年度に比べて、全国で800ヘクタール減少しています。少子化の影響や農家の高齢化の影響が出ているのもその要因の一つではないかと思います。作付面積が毎年のように減少していることが考えられます。

鹿児島県全体では、35万トンの生産です。また、さつまいもの用途別でみると、平成23年度の統計では、澱粉用42%、焼酎用42%、加工食品用8%、青果用6%、その他2%です。したがって、種子島全体では、全国的に減少しているので、6万トンを下回っていると推定されます。

【日本甘藷栽培初地之碑】

国道沿いにある日本甘藷栽培初地之碑

日本甘藷栽培初地之碑
【撮影場所】
鹿児島県西之表市下西下石寺
【撮影日時】
2010年5月1日/16時15分

西之表市街地から国道58号線を中種子へ向かって車で走ること7分でこの地に着きます。石寺海岸の下西農免道路入口手前の左側に、日本甘藷栽培初地之碑が建立されています。

甘藷の栽培では、青木昆陽が徳川吉宗の命を受け甘藷栽培に成功し、全国的に広まり普及したことで有名ですが、しかし、青木昆陽が成功する以前に、種子島において、いち早く甘藷は栽培されています。その甘藷の栽培に成功した人物は、西之表市下石寺の大瀬休左衛門です。

第19代島主種子島久基(栖林公)は、元禄11年(1698年)琉球王から甘藷を手に入れています。それを家臣に栽培方法の研究を命じ、家臣は下石寺の大瀬休左衛門に試作させ、試行錯誤が続く中、ついに栽培に成功します。そして、薩摩藩に広まり、7年後山川でも栽培に成功するなど、芋神様と言われた青木昆陽は、元禄11年(1698年)に誕生しています。

したがって、日本最初の甘藷栽培は、種子島の西之表市下石寺で行なわれていたのです。記念碑の前には、案内板があり大瀬休左衛門の墓地も分かるようになっています。

【大瀬休左衛門の墓地】

墓前には、大きめのからいもを供えている

大瀬休左衛門の墓地
【撮影場所】
鹿児島県西之表市下西下石寺
【撮影日時】
2010年5月1日/16時22分

国道58号線沿いの「日本甘藷栽培初地之碑」から、東へ180メートル行った下石寺公民館の少し手前に、大瀬休左衛門の墓地があります。

墓地の手前には、甘藷栽培について詳しく説明が書かれた案内用のパネルが設置してあります。大瀬休左衛門の墓地は、西之表市制30年を記念して建てられ、墓の中には休左衛門夫妻が祭られています。そして、その年に収穫された大きめのからいもを墓前に供えています。

また、毎年、西之表市では、11月に「さつまいもフェスタ」のイベント事業を行っています。その「さつまいもフェスタ」の前に、大瀬休左衛門の子孫に当たる大瀬家が西之表市長に、その年に収穫されたからいもを献上しています。

したがって、現在でも種子島ではからいもを大切な農産物として扱っているのです。種子島は、鉄砲伝来や種子島宇宙センターで有名ですが、甘藷が日本で最初に栽培された地でもあります。

【種子島ゴールド】

種子島ゴールドは、種子島を代表するさつまいもの一つです。種子島ゴールドは、別名「種子島むらさき」とも呼ばれています。或いは、紫芋ともいいます。昭和63年、西之表市上能野で「種子島紫」を収集し、平成元年から農業試験場熊毛支場で、皮色が白の系統を選別したもので、平成11年3月17日に品種登録されています。

肉質は粉質で、ほくほく感があります。糖度も紅さつまと同程度で、食味は中程度です。種子島ゴールドはその名の通り、芋の表面は普通の色ですが、中は鮮やかな薄紫色です。特徴を一言でいうならば、紫芋でたいへん珍しい芋なのです。 種子島ゴールドは、種子島全域で栽培されています。甘みもあり、用途も色々です。焼き芋、お菓子の材料、そして焼酎も作られています。

もちろん、種子島ゴールドで焼酎も造られています。造られた焼酎は、次のような銘柄があります。
「しまむらさき」、「紫(ゆかり)16,25」、「紫金の玉」、「紫育ち」、「むらさき浪漫」
何れも、香りがほんとうに素晴らしく、飲みやすい逸品です。

種子島ゴールドの蒸す前と蒸した後での糖類の変化を示したのが下表です。蒸す前の糖は、4.97で5%以下ですが、蒸すことによって、15.54%にまで上昇しているのがわかると思います。これは、でんぷん質が糖に変化したためです。澱粉の割合がその分減少しているのが分かると思います。

表2 蒸煮前後の糖類の変化
試料の形態 でん粉(%) 果糖(%) ブドウ糖(%) ショ糖(%) 麦芽糖(%)
蒸煮前 23.2 0.43 0.49 4.06 0.05以下
蒸煮後 11.6 0.49 0.45 4.30 10.3

 

種子島ゴールドの無機質成分を示したものが、第3表です。さつまいもは、リンやカリウムを多く含んでいます。また、種子島ゴールドは、アントシアニンを豊富に含んでいるのも特徴です。健康食品ですので、ぜひ、種子島の紫芋をご賞味ください。

表3 無機質成分
リン(mg/100g) 鉄(mg/100g) カルシウム(mg/100g) ナトリウム(mg/100g) カリウム(mg/100g)
52.3 0.51 37.2 52.4 439

種子島ゴールド(種子島むらさき)

種子島ゴールド
【撮影場所】
からいもフェスタ
【撮影日時】
2005年10月23日/10時47分

種子島ゴールドの苗

種子島ゴールドの苗
【撮影場所】
さつまいも308ふれあいフェスタ
【撮影日時】
2006年11月12日/9時25分

資料提供:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場

【安納紅】

安納紅は学名ですが、通常は「安納芋」と呼ばれています。安納紅は、昭和63年、西之表市安城立山で収集し、平成元年から農業試験場熊毛支場で、紅系統の在来いも(通称安納芋)から形状、外観に優れ、収穫、ブリックスの高い個体を選別し、平成10年10月29日に品種登録されたものです。

「安納紅」に表面の皮の色が違うだけで肉質などは全く同じの「安納こがね」があります。安納紅は、西之表で主に栽培されており、安納こがねは、中種子、南種子で主に栽培されています。

安納芋は、最近、急速に名前が知れるようになってきました。テレビや新聞でも取り上げられ全国的に有名になっています。それは、何と言っても甘さが日本一のカライモです。糖度は、通常13〜15度ですが、中には16〜17度くらいのものもあります。肉質はねっとり感のある芋です。特に焼き芋でたくさん島外に出荷されています。種子島を代表するカライモといってもいいでしょう。

当然、安納芋で焼酎も造られています。 安納いもで作られた焼酎は、次のような銘柄があります。
「しま茜」、「夢尽蔵」、「安納」
何れも、甘い香りにつつまれ、口当たりもほんとうに素晴らしく、焼酎の逸品です。

安納紅の蒸す前と蒸した後での糖類の変化を示したのが下表です。安納芋の大きな特徴は、ショ糖の度合いが普通のさつまいもに比べて約2倍も高いことです。その高さが、甘いさつまいもになっているのです。また、果糖やブドウ糖もかなり高いです。

表4 蒸煮前後の糖類の変化
試料の形態 でん粉(%) 果糖(%) ブドウ糖(%) ショ糖(%) 麦芽糖(%)
蒸煮前 22.1 0.87 0.73 4.53 0.05以下
蒸煮後 11.5 0.72 0.70 4.80 10.25

 

安納紅の無機質成分を示したものが、第5表です。種子島ゴールドと比較すると、無機質は、全般的にやや低い値となっています。栄養価は、種子島ゴールドこそいいようです。

表5 無機質成分
リン(mg/100g) 鉄(mg/100g) カルシウム(mg/100g) ナトリウム(mg/100g) カリウム(mg/100g)
31.2 0.42 29.7 42.9 339

安納紅(安納芋)

安納紅(安納芋)
【撮影場所】
からいもフェスタ
【撮影日時】
2005年10月23日/10時47分

安納紅(安納芋)の苗

安納紅(安納芋)の苗
【撮影場所】
さつまいも308ふれあいフェスタ
【撮影日時】
2006年11月12日/9時24分

資料提供:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場

【安納こがね】

安納こがねも通常は「安納芋」と呼ばれています。安納こがねは、昭和63年、西之表市平田で収集し、平成元年から農業試験場熊毛支場で、在来種「安納芋」から皮色が淡黄褐で、形状、外観、収量が優れる個体を選別し、平成10年10月29日に品種登録されています。

安納こがねと安納紅は、表面の色が違うだけで肉質、糖度はほぼ同じです。安納こがねは、中種子、南種子で主に契約栽培されています。減農薬栽培とか、無農薬栽培とか、そういう方法でつくられています。

もちろん安納芋で焼酎も造られていますが、安納紅と安納こがねを混合しています。安納紅と同じ糖質なので、そのまま焼き芋などで食べるほうが一番美味しく食べられるようです。この安納こがねも種子島を代表するからいもといってもいいでしょう。生果用ですので、地元のスーパーでも売られています。 なお、安納こがねはJA種子屋久で「安納もみじ」という商品名で販売されています。

安納こがねの蒸す前と蒸した後での糖類の変化を示したのが下表です。安納紅と比較すると、数値的にやや違いが分かります。甘さを示すショ糖の度合いは全く同じとなっています。

表6 蒸煮前後の糖類の変化
試料の形態 でん粉(%) 果糖(%) ブドウ糖(%) ショ糖(%) 麦芽糖(%)
蒸煮前 22.5 0.65 0.68 4.87 0.05以下
蒸煮後 10.6 0.83 0.78 4.80 10.9

 

安納こがねの無機質成分を示したものが、第7表です。安納紅と比較すると、ナトリウム以外は、すべて高い数値となっているので、栄養価は安納こがねこそいいようです。

表7 無機質成分
リン(mg/100g) 鉄(mg/100g) カルシウム(mg/100g) ナトリウム(mg/100g) カリウム(mg/100g)
40.9 0.47 23.8 36.5 369

安納こがね(安納芋)

安納こがね(安納芋)
【撮影場所】
からいもフェスタ
【撮影日時】
2005年10月23日/10時48分

安納こがね(安納芋)の苗

安納こがね(安納芋)の苗
【撮影場所】
さつまいも308ふれあいフェスタ
【撮影日時】
2006年11月12日/10時15分

資料提供:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場

【安納芋のルーツ】

種子島の特産品である「安納芋」は、テレビ、ラジオでも多く取り上げられ益々ヒート気味になっています。ところで、安納芋のルーツはどうなっているのか? そもそも日本および種子島にさつまいもはなかったのですから。種子島に伝来されたのが、元禄11年(1698年)に琉球王から手に入れています。したがって、安納芋もほかのさつまいもも古来からあったわけではなく、国外のものだったわけです。

鹿児島県農業試験場熊毛支場を訪問し、安納芋のルーツについて、整理したものを提供していただきました。そのルーツは、次の通りです。

第二次世界大戦後、スマトラ島(現:インドネシア)北部のセルダンという地域から美味しい芋として、帰還兵が1個のさつまいもを持ち帰り、九州農試種子島試験地(現:九州沖縄農業研究センター)に持ち込まれ、苗が作られました。その芋は、美味しいさつまいもとして安納地区に広まり、地名に由来する「セルダン」、「セルラン」といった呼称の他、栽培を始めた当初に関わった人の名から「まったーいも」や「アッキーいも」といった呼称が残っています。しかし、帰還兵の氏名や所在については、現在も不明です。その後、安納地区から栽培が広まり、種子島全島で栽培されるようになったことから「安納いも」と呼ばれるに至っています。

熊毛支場(現:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場)では、昭和63年に種子島島内で栽培されているさつまいもを収集し、平成元年から選抜育成を開始し、在来の安納いもの中から品質や収量特性に優れる「安納紅」と皮色変異の「安納こがね」の2品種を育成しています(品種登録第7995号、7996号:平成10年10月登録)。
驚きの甘さと、ねっとりとした食感で人気が高まり、全国に知られるようになった「安納いも」は,『種子島の宝』になっています。

以上の通りです。

安納芋のルーツについては、古くからあったとか、いろいろな諸説や言い伝えなどありました。安納芋の歴史は古くはなくて、戦後の出来事だったのです。兵隊さんが関係していたのは、少々驚きでした。

【安納芋の苗について】

安納芋の苗が、生産者に届くまでは次の通りです。

@品評会で好成績を収めた安納芋を選びます。

Aよい株を選ぶ(説明:品評会の芋から苗を取り、個数が多く、形状の良い系統を選抜します。試験場で芋苗から栽培し、2年以上優れた成績の安納芋を選抜)

B選んだ芋の茎頂培養(芽の先端部は病気に侵されていません。顕微鏡を見ながら、中の生長点部分を取出し培養するとウイルスフリー苗ができます。)

Cバイオ苗の中から優良系統を選びます。

D県経済連と種子島高校がそれぞれ保存している無菌苗を元に増殖します。

E経済連で増殖した苗は農協の育苗施設でさらに増殖し、農協組合員に販売されます。種子島高校で増殖した苗は市・町の育苗施設でさらに増殖し、「安納いもブランド推進本部」会員の生産者に販売されます。

F農家や生産者は購入したバイオ苗を元に、さらに自分で増やして植え付け用の苗を作ります。

安納芋の無菌苗

安納芋の無菌苗
【撮影場所】
かんしゃ祭
【撮影日時】
2008年11月23日/11時03分

資料提供:鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場

【にんじん芋に関すること】

昔、「にんじん芋」というさつまいもが種子島で多く栽培されていました。正式な名前は、ハヤトイモです。ハヤトイモは、大正時代にアメリカから入ってきたさつまいもです。にんじんにそっくりで、当時としては美味しい芋で、よく煮て食べていました。現在、市場に出回ることはありません。馬場製菓で食品加工用として「ようかん」、「まんじゅう」の原材料として使用されています。たまに、100円市場で売られているとか。

にんじん芋(ハヤトイモ)

にんじん芋(ハヤトイモ)
【撮影場所】
からいもフェスタ
【撮影日時】
2005年10月23日/10時46分

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2014.3.12〜