蚕舞かぁごまぁ

導化役のひょっとこで盛り上がる蚕舞

【撮影場所】: 鹿児島県熊毛郡南種子町平山広田
【撮影日時】: 2018年1月20日(土)/18時15分～20時16分
【行事場所】: 南種子町平山広田地域
【行事時期】: 毎年一月中旬、午後六時過ぎより
【アクセス方法】: 南種子市街地から国道58号線経由で約20分。

【踊りの説明】

平山広田地域に小正月行事として伝承されている「蚕舞｣です。毎年一月中旬に集落内を巡回して行われます。蚕舞は、本来、養蚕が盛んだった時代に、蚕の豊作を祝う行事でしたが、現在は家内安全・繁栄、無病息災などを祝う行事として、種子島では、南種子町で伝承されています。なお、前年に不幸のあった家庭には訪問しません。

ところで、蚕舞は読んで字の如く、蚕に似せた踊りで、青年男子が着物姿で女装して各家庭を回り、手踊りで優雅な舞いを披露する小正月行事です。頭巾の顔の中心部は蚕の口に似せてあります。そして、平山地域の蚕舞の特徴である男役の「ひょっとこ」がいることです。踊り子のほかに太鼓、鉦の鳴り物もいます。

広田地域の蚕舞は、役員、青年団が中心となり二班で行われています。午後五時半を過ぎると公民館に集まり、班ごと回る家庭を確認したり、踊り子は女装、ひょっとこに着替えを行います。そして、六時過ぎになると、いよいよ蚕舞を行うために法華宗善福寺に向います。

写真一枚目は、民家での蚕舞です。踊り子は団子(だご)を持って踊っているところです。玄関外では鳴り物を叩きながら、蚕舞を歌っています。鳴り物が加わっていますので、大変リズミカルな音頭で、蚕舞の優雅な踊りを楽しめるのです。

民家に着くと、まず、先導役が玄関を開け、「お祝い申す　お祝い申す」と言って、鳴り物を叩き始め蚕舞が始まります。しかし、踊り子は玄関口で待機しています。「九十九かいのこのみや嬢を・・・」の歌詞の部分から女装の踊り子が民家に入り、正座して挨拶のあと蚕舞の踊りが始まります。また、「これより東の・・・」の歌詞が出る部分で「ひょっとこ」が徳利を担いで民家の中に入りひょっとこ踊りをしながら茶化したりします。徳利を持っていますので、焼酎などを入れてもらいます。そして、「赤まい白まい・・・」の歌詞部分から女装の踊り子が紅白の切り餅を持って踊ります。切り餅には、御祝儀袋を付けています。蚕舞が終わると飲み物をいただいたりします。

ひと通り民家の蚕舞が終わると、最後は公民館で蚕舞です。一連の蚕舞が終わると、公民館で宴会です。今宵ひと時の祝いの宴も盛り上がり小正月行事の蚕舞も無事終了するのです。

	民家に来ると、玄関を開けて、「お祝い申す　お祝い申す」といって、蚕舞の唄を唄います。
	蚕舞の鳴り物です。玄関外で、太鼓、鉦をたたいて、蚕舞の唄を合唱します。静かな夜空に蚕舞が響き渡ります。
	民家での蚕舞です。ひょっとこは、まだ、家の中に入ってきていません。
	蚕舞いが始まると、家主は正座して静かに蚕舞を見ています。しかし、ひょっとこが入ってくると、家じゅう笑いに包まれます。
	蚕舞で、ひょっとこが家の中に入ると、大きな笑い声が聞こえてきます。家の人を茶化したりしてユーモラスな恰好で踊ってくれるのです。【平成28年1月16日撮影】
	踊り子はこのみやじょうを持っての踊りですので終盤です。女装の踊り子の顔は、蚕の繭に似せて頭巾をしています。蚕舞が一段と優雅に見え民族的な舞です。切り餅には、ご祝儀などをつけています。また、ひょっとこの徳利を子供が担いでいます。
	家の中での舞いが終わると、焼酎やビール、おつまみなどを差し出してくれます。
	公民館での踊りが終わると、ナオライです。焼酎や食べ物をともにしながら蚕舞を語らいます。写真は、関係者のあいさつが終わり、乾杯で宴が始まったところです。

　蚕舞(かーごまー)

お祝い申す　お祝い申す

これから申すよ　門から申すよ
この家は家は　裕福まゆの家とみかけ申すよ
まして祝うはこの家祝うておじゃるろうから　お祝い申すよ
九十九かいのこのみや嬢を　まわしまするさきに　綾をはえ　錦をひろげ
ヨーラ　ランランラと　とくとふませて
これより東の朝びらイの峠の　ケンケン鳥のメン鳥の
右のオボリ羽根　左の風切り　おっとり合せて
ひと根がいですくえば　千枚すくう
ふた根がいですくえば　二千枚すくう
三千枚のこだねを　寄せよ集め　アリ児になるときゃ
ハイライライと申すよ　ツーブラ児になるときゃ
ツールツル申すよ　長雨になれば
ハジの舞をめさす　フシ児におきるきゃ
あまかも嫌わず　つゆかも嫌わず　赤まい白まい　かがせ給うれ
そのまゆの固さは　あんま河原の石よりも　固うござる
ヨーラランラ　どの駒か　春駒のいさむごとくに　夢に見てさえものゆきものよハハジョ様　娘ジョウかよ
町のお祝い　おくみやれ