中種子町増田古房地域に伝承されている「町祈祷」です。毎年一月二十日に、古房神社に集まり、地域の境界及び三差路に立てる魔除けの辻札作り、午後二時から神社で祈祷神事、そのあと、神社近くのハマ場へ移動して破魔祭、神社に戻り、境内で関係者によりクズ葛で作った輪を転がして、手作りの弓矢で突き刺さるまで行われています。
ところで、ハマ行事は「ハマ祈祷」、「町祈祷」とも呼ばれ、種子島の各地域で行われています。地域によっては、「先祖祈祷」とも呼んでいます。悪魔を退治し、地域の繁栄、安泰、無病息災などを祈る行事です。古房では、弓、矢、辻札、転がす輪などは、前日に作っています。
出来上がった弓、矢、輪、辻札は、古房神社に持ち込まれ、神道により祈祷されます。関係者は、椅子に座り、宮司により町祈祷神事が行なわれます。そして、ハマ場に移動して、破魔祭神事が行われ、神事の途中で宮司が手製の弓矢でえいっと声を出して放ちます。ここでの神事が終わると、祈祷した魔除けの辻札を地域の境界、三差路に設置します。
神社境内では、左に手作りの弓矢を持ち、前方からクズで作った輪を転がします。そして、弓で突き刺さるまで行ないます。地域の繁栄、安泰、無病息災などを祈る破魔の儀です。貫通させると、その輪は貫通させた人物が自宅に持ち帰り、この年の年男になります。なお、輪を転がすときに、特に言葉はなく、準備ができ次第行ないます。
写真一枚目は、神社拝殿内に置かれた手作りの弓、クズで作った輪、右にニガダケの矢です。
古房3号線と古房5号線と交わる交差点付近にある破魔場です。前方の石碑には、祝八幡大神と刻まれています。ここで破魔祭が行われます。 | |
ニガダケの先端を半分に割り込み、その間におまじないの文字が記入された札を挟み込んで、先端をひもで結べば辻札が完成です。 | |
こちらは、祭壇に供えるお酒、大豆、お塩、お米、野菜、果物、海藻、煮た里芋、お魚などです。 | |
古房神社での町祈祷神事祝詞の奏上です。地域の安泰、無病息災などを読み上げます。 | |
関係者による玉ぐしの奉奠です。集落長による玉ぐしを奉り地域の安泰、繁栄などを祈願します。 | |
祭壇に供える品を破魔場に持ち込みます。破魔場は入口付近にあります。 | |
破魔祭神事での修祓です。地域の境界、三差路に設置する辻札、ここで破魔矢を放す弓矢です。 | |
祝詞奏上の間、宮司により破魔矢を放ち祈祷します。このあと、再び祝詞を読み上げます。 | |
神社境内で、クズの茎で作った輪を転がし、左から弓矢を放ち輪に突き刺さるまで行ないます。写真は、お二人が見事、突き刺せました。二人だったので、判定は中心に近い人物に決定しました。この年の年男となるのです。突き当てた輪は家に持ち帰り飾ります。 | |
地域の境界、三差路に魔除けの辻札を設置します。中之町本源寺線と峯下2号線が交わる三差路です。 | |
町祈祷、破魔祭で使用した弓矢は、祭が終わると焼却します。 | |
お神酒受けです。昔からお餅の代わりに、煮た里芋を配布します。 | |
神社拝殿内でのナオライです。今年の町祈祷、破魔祭、豊作などを飲み語り合います。 |
※ 2023年(令和5年)1月20日(金)、中種子町増田古房神社、破魔場で行われた町祈祷・破魔祭を紹介しています。この動画の中には、辻札作り、弓、矢、クズの茎で作った輪、神社内での辻札を取り付ける作業、古房神社での町祈祷神事、破魔場での破魔祭神事、宮司による破魔矢の放ち、神社境内での輪を転がし弓矢を突き刺せる状況、魔除けの辻札の設置状況、貫通させた人物のコメント、お神酒受け、拝殿内でのナオライ、参加者の町祈祷コメントなどを収録しています。
なお、YouTubeでのアドレスとタイトルは次の通りです。
【町祈祷・破魔祭 宮司の破魔矢放ち・一般によるクズの茎で作った輪を転がし弓矢で突き刺す破魔の儀 令和5年増田古房〜種子島の伝統行事】