5月に入っても晴天がなかなか続かない種子島です。きょうは東の風が吹いていますが晴れています。今回は初めて中種子町の散策で場所は熊野周辺です。県道76号線を経由して古田から安城に出て犬城海岸に立ち寄りました。馬立の岩屋の北側にあたります。ここ周辺もたいへん景色のいいところです。「種子島の海岸」のコーナーでも紹介しています。この海岸の特徴は、貝殻や軽石などたくさんある場所です。写真も撮り終え熊野に向かうことにしました。広域農道を通り、そして県道75号線を南下すると熊野はすぐそこです。熊野神社の鳥居を少し通り過ぎた県道沿いに車を置くことにしました。
県道沿いに熊野神社の鳥居があります。右側道沿いには20m間隔で紅色の献灯が建てられています。その献灯には寄贈者の名前が書かれています。鳥居をくぐるとすぐ左にはコモチマンネングサがぎっしり黄色鮮やかに咲いています。程よい風があってとても涼しいです。道沿いには、ムラサキカタバミ、カタバミなどの草花が元気に咲いています。しばらく行くと、ゲートボール場そして二階建ての中種子町立漁村センターがあります。センターの東側に「釣業元祖田中金蔵之碑」が建てられ、右側にその案内板があります。だいぶ風化して読みにくい状況になっています。その田中金蔵翁の業績を簡単に説明すると、
翁は私学校生徒として時の偉人西郷隆盛に師事し、明治10年の西南の役には薩摩軍に兄弟と共に従軍。城山での攻防戦に敗れ、官軍の追撃をかわし、豊後水道を北上、各地を逃亡しつつ南下。明治11年10月南海に弧絶する種子島赤尾木の里に定住。漁業を営み、その後坂井屋久津に移転後、明治13年3月6日、東海岸熊野浦に来て最後の寄留地とする。翁は地元浦の漁る業の古さを説き、当時としては近代的な一本釣漁業をとり入れ、多大な水揚げをなし、今日の一本釣漁業の基礎をつくった功績を残した。翁が亡くなる明治20年11月まで漁業者の良き指導者として熊野浦漁業の発展に貢献するに至ったという。この漁村センターの落成を機にその徳を不朽にたたえ碑石を建てています。
漁村センターを過ぎると、左側は水路みたいですが浜川です。その浜川には穂状植物がたくさん生えています。ほとんど水は見えていません。時折山からカラスの鳴き声が聞こえてきます。しばらく行くと浜川に橋がかかっています。瀬浦橋です。その橋を過ぎると三叉路です。右は熊野神社の表参道で、左は裏参道に通ずる道です。裏参道から参拝することにしました。橋のすぐそばに、NTTドコモのアンテナがあります。古いものと新しいものが共存した場所になっています。左側は竹、右側にはマテバシイ、イヌビワなどがあります。
橋から100m過ぎたところに神社への参道があります。その入口の左はイヌビワ、ヒサカキが、右は山びわの木があります。参道を少し過ぎたところに民家もあります。先に進むと両サイドから木々が負い被るようになってきます。マテバシイ、ヤブニッケイなどあります。
しばらく行くと熊野神社の社人の住居があります。中種子の方は、一般的に社人のことをホイドンと呼んでいます。その前を通ると、イヌマキやタブノキ、桜もあります。左側には小さな宮もあります。ここから神社までは上り坂となります。参道沿いは自然豊かな場所です。ほとんどがマテバシイ、スダジイです。スダジイにはヤッコウソウが寄生するのでこの神社周辺で見かけることができます。神社入口付近の参道沿いに案内板が立てられています。雑木林の中からヒヨドリの鳴き声が聞こえてきます。道沿いの右にはタツナミソウも咲いています。時折林のすきまから見える景色もいいです。途中左にポンプ小屋もあります。ここを過ぎると左に駐車場があります。その駐車場を過ぎると神社境内です。その途中に先ほどの案内板があります。
境内にはイヌマキ、サクラ、ユズリハ、杉、スダジイなどの木々が生い茂っています。誰もいなくて長閑なひとときです。「交通安全」、「五穀豊穣」、「家内安全」、「無病息災」などののぼりも立ててあります。静けさが何ともいい感じです。参拝も終え階段を下りると、右に手水舎があります。その階段付近から前方を眺めると素晴らしい景色が目に入ってきます。写真で真ん中付近の白いところは、ゴカイの養殖場です。その先の海の向こうは自然レクレーション村です。参拝して帰る途中この場所に来ると、誰もが立ち止まって景色を眺める場所です。急な階段を上り難儀した思いをいっぺんに開放してくれます。表参道を通り、ここを後にすることにしました。
階段の両サイドには、ツツジを植えています。花の時期を過ぎているので、花びらは見当たりません。階段の一番下には左右に大きな献灯があります。左は浜川です。この付近は水も見えています。そして穂状植物もたくさん生えています。また道沿いにはネコノシタ、ミヤコグサ、ノブドウもあります。右の林はウバメガシ、マテバシイ、シャリンバイなどがほとんどです。土手付近からは湧き水も出ています。しばらく進むと瀬浦橋にさしかかります。県道に戻り熊野漁港へ向かうことにしました。
鳥居を出た後、県道を南下しています。しばらく進むと、左に雑木林があり、その中からケンケンの鳴き声がしてきます。ケンケンとは種子島弁でキジのことをいいます。小さい林ですが、結構キジはどこでも生息しているんだと思いました。この場所を過ぎ少し行くと、十文字の交差点があります。右に行けば、坂井歴史公園があります。国道58号線に出る道です。このまま進めば、平山を通り種子島宇宙センターへ行く道です。左に行けば熊野漁港に出ます。もちろん左へ行くことになります。
交差点を過ぎると緩やかな左カーブになっています。曲がり終えると小さな十文路があります。その交差点付近の左側は、イヌマキ原生林です。中種子町の植物保護指定になっている場所です。その案内板も道沿いにあります。この国有林にたくさんのイヌマキが生い茂っています。このイヌマキ原生林については、「中種子町の植物保護指定」のコーナーで紹介しています。そちらもご覧ください。右の小さな路地を行けば、この集落の墓地などがあります。そのまま進むと、左側のイヌマキなどの木々の上部は葉が枯れ落ちているものが多いようです。相次ぐ台風の襲来によるものでしょう。右は砂浜です。その砂浜にはたくさんのキンケイギクが満開になっています。鮮やかな黄色がほんとうにきれいです。
沖に出ている防波堤があるので、そこへ行き先端から眺めることにしました。その防波堤は穴がたくさんあるので、注意しないと足を踏み外すこともあります。だんだん先へ行くと眺めもよくなってきます。残念ながら曇った状態です。堤防から西を見ると、前方にレクレーション村を展望できます。大小の岩屋も見れ景色もいい場所です。普通はレクレーション村から展望するのが一般的です。今はその逆を見ているのです。写真も撮り終えここを後にすることにしました。
道にでて進むと、、左に種子島で唯一ゴカイの養殖をしている事業所が見えてきます。今が出荷の最盛期で、関西方面に出荷されていきます。少し行くと、右は種子島漁協の中種子支所です。先ほどの田中金蔵翁が一本釣漁業で活躍したところです。熊野はたいへん風光明媚な場所です。この漁港周辺では釣り人も来る場所です。特にこれからチヌ(黒鯛)を求めてきます。この漁港周辺で大型も上がる場所として種子島でも有名です。反対側の岸壁付近でヒラアジなども釣れる場所です。漁港の前の道沿いにはカイコウズもあり、花を咲かそうとしています。さらに進むと、恵比須橋があります。その左には大きな水門があり、その付近でボラ釣りをしています。食べるボラではなくて、イカ引き用のエサになる20センチ前後の小さなボラを釣っているのです。
ここを過ぎ海に出てみると、以前と大きく変わっています。波消しブロックがたくさん海岸に積まれています。権現山の先端付近まで積まれています。熊野神社がある山は権現山といわれています。陸から見る山は、自然豊かな山に見えますが、海から反対側を見ると悲惨な権現山です。西と東ではこんなにも違うものなのかと。高波で山を守るためにブロックを積んだと思われます。海側の自然の破壊力に感心しました。
先へ行くと、えびすの鼻海浜公園があります。ウバメガシや、マサキなどたくさん植えられています。休憩所も作られており、その先から南側を眺めると侵食された大きな穴の開いた岩屋を展望できる場所になっています。漁港の岸壁では釣りを楽しんでいる家族も見かけました。ここで少し休憩し後にすることにしました。
県道に後帰るため漁港を過ぎると、先ほどのイヌマキ原生林のところにやってきます。左に「海軍輸送船志自岐殉難者碑入口 大正8年8月15日遭難」と書かれた標柱が立てられています。小さな路地から海側に向かうと、両サイドは木々で少しひんやりしています。中ほどまで来ると右に墓らしいものがあります。2つ並んでいて右は「有無縁精霊」などと左は「妙法 善神」などと書かれています。無縁仏などを祀っているのかよくわかりません。そこを過ぎと海岸の砂浜が見えてきます。出てすぐ右側に海軍輸送船殉難者の慰霊碑があります。その慰霊碑の裏に説明が刻まれていますが、風化してほとんど読めない状態です。お賽銭もいれ手を合わせることにしました。ここは集落の墓地になっています。海を眺められてこんな墓地もいいな〜とつくづく思うことでした。この墓地の前の道をさらに行くと県道に出ます。出てすぐに熊野川に新川橋がかかっています。その海岸の川沿いに堤防があるので、そこから眺めることにしました。
そして、橋に戻り上流側を見ると、たいへん綺麗な石積みです。古くから護岸工事をしていたんだと思いました。この橋を過ぎると、右に中種子町温泉保養センターがあります。昔、ここには国民宿舎があった場所です。 その前の県道から見る景色はほんとうにきれいです。大小の小島が見れる場所です。少し先に行くと、海岸沿いは自然レクレーション村です。もちろん、海水浴やキャンプもできる場所です。家族連れでキャンプをしたりしていました。このレクレーション村の西側の林はトベラなどがたくさん生息していて、そのトベラの根に寄生するキイレツチトリモチが生える場所で中種子町の植物保護指定になっている場所です。
レクレーション村の南側に行くと、メヒルギを見ることもできます。もちろんこのメヒルギも保護指定になっています。そして、さらに南の岩屋のところに、阿獄の洞穴があります。貝や石器類が出土した洞穴ですが、現在台風の高波により、風化しています。案内板もなくなり洞穴の前も変わり果てています。早くどうにかしてほしいものです。せっかく観光客が来ても何がなんだか分からないですね。この周辺の岩屋は侵食されているので、景色もきれいな場所です。その景色に見とれているうちに散策も終わったようです。
※散策日:平成18年5月4日/10:47〜13:36/晴
※追記:阿嶽の洞穴の案内板は新しく設置されています。H18.8.15確認
「新町」熊野神社入口をスタート
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「中種子町立漁村センター」←写真1枚目
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裏参道から「熊野神社」へ
↓←写真2枚目
熊野神社←写真2枚目
↓←写真3枚目
表参道から県道75号線へ
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「熊野神社入口」
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「塩屋」
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「熊野漁港」←写真4枚目
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自然レクレーション村
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終点「阿嶽の洞穴」阿嶽川沿い←写真5枚目